意義をまとめると、以下の通りです。

 
@ 現在罹患している疾病の早期発見(生活習慣病・結核等)
A 将来疾病に至る可能性の把握(生活習慣病予防等)
B 業務による健康への悪影響の早期発見(作業関連疾患等)
C 経年的な健康状態の把握
D 職場への適正配置に関する資料(就業措置等の事後措置)
E 労働衛生教育へのフィードバックの資料


1. 生活習慣病

 現代社会においては、食生活の西洋化や栄養過多、運動不足などから肥満者が増加しています。また仕事や生活上の多忙さや様々なストレスから、睡眠不足に陥ったり、喫煙や飲酒が増える傾向にあります。これら生活習慣(ライフスタイル)の偏りが病気の発症と進行に関与する疾患を生活習慣病と言います。これは以前、成人病と言われていましたが、10〜20代の者にも見られることから、現在はこのように呼んでいます。代表的なものとしては、右表に示す疾患があります。また高血圧や高脂血症、糖尿病などから進展する動脈硬化に基づく心血管疾患や脳血管疾患、さらに悪性新生物:癌の一部もこれに含まれます。


2. 健康診断(健診)

 生活習慣病の多くは、ほとんど自覚症状が無く発症し進行します。また動脈硬化が進行した場合、心筋梗塞などの心血管疾患や脳卒中など命に関わる重篤な疾患の危険性が高くなります。そこで生活習慣病を始め、頻度が高く、予防措置が可能な疾病を早期に発見し、早期治療に導くこと(疾病の二次予防と言います。)が健診の一つの意義であるのです。毎年受ける意味もここにあります。 さらに労働者一人一人の健康状態を適切に把握し、保健指導することで、良い健康 を保持すると共に、より質の高い健康状態へと健康を増進し、疾病の発症そのものを 予防すること(一次予防と呼ばれています。)も、健診の目的になっています。

3. 健診後の措置

 健診は、その検査結果や保健指導をもとにして、生活習慣の改善等に繋げていくことに本当の意味があります。このため事業者には、健診結果の記録保存や受診者への結果通知が義務付けられています。それと共に、事業者は必要と認められる労働者に対して、就業場所の変更や作業転換、労働時間の短縮等の措置を講じることが必要です。また有害業務においては、作業環境測定の実施や施設・設備の整備等の措置を行わなければなりません。 労働者各自は自分の健康を的確に捉え、自ら健康の自己管理と向上に努めていくこ とが大切です。


 
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 定期健康診断は、常時使用する労働者に対して、事業者が1年以内毎に1回、定期的に行わなければならないとされています。
検査の項目は、以下の通りです。

 
@ 既往歴及び業務歴の調査
A 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
B 身長、体重、視力及び聴力の検査
C 胸部エックス線検査及び喀痰検査
D 血圧の測定
E 貧血検査‐‐‐赤血球数、血色素量
F 肝機能検査‐‐‐GOT(AST)、GPT(ALT)、γGTP
G 血中脂質検査‐‐‐総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
H 血糖検査(ヘモグロビン(Hb)A1cに代えることも可)
I 尿検査‐‐‐尿糖、尿蛋白
J 心電図検査

 但し、次に挙げる項目に関しては、医師の判断により省略することが認められています。

  1. 身長: 20歳以上の者
  2. 喀痰検査: 胸部エックス線検査で結核等を疑わせる所見が 認められない者
  3. EからH及びJの検査: 40歳未満(35歳を除く)
  4. 尿糖: 血糖又はHbA1c検査実施の場合


 
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1.貧血検査:赤血球数、血色素量

 赤血球は、肺から取り込んだ酸素を全身に運ぶ役割をしている細胞です。その中に含まれる血色素(ヘモグロビンとも言います。)が酸素運搬の担い手であり、この二項目を測ることで、貧血の有無とともに、そのタイプをある程度推定できます。貧血になると疲れやすく、少しの運動でも息切れや動悸がしたりします。貧血で最も頻度の高いものは鉄欠乏性貧血で、若年から中年の女性によく見られます。時に胃腸からの出血や、女性では子宮筋腫に基づくこともありますので、精査が必要です。

2.肝機能検査@:GOT(AST)、GPT(ALT)

 この2項目は、合わせてトランスアミナーゼと呼ばれ、アミノ酸代謝に関わる酵素蛋白です。最近は、それぞれAST、ALTとも表示されます。主に肝障害の程度、即ち、肝細胞がどの程度壊れているかを示すものです。B型やC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎や、アルコールによる肝障害等で上昇しますし、また肥満による脂肪肝でも軽度上昇します。GOT・GPTのどちらが高いかによって病状をある程度推測できますが、これのみでは肝障害の原因は解りません。GOTは筋肉や心筋などの障害でも上昇することがあります。

3.肝機能検査A:γGTP(ガンマGTP)

 日本人の9割の人では、飲酒量に伴って上昇します。アルコールによる上昇は、この酵素蛋白の肝臓における合成が高まることによるもので、肝細胞の障害を直接的に表すものではありません。しかし多量の飲酒ではたいてい肝細胞障害が生じ、GOT・GPTも上昇してきます。またγGTPは胆汁の流れが妨げられた時にも上昇します(胆汁うっ滞と言います)。

4.血中脂質検査@:総コレステロール、HDLコレステロール

 コレステロールは脂質(脂肪)の一種で、細胞膜の重要な成分であるとともに、ある種のホルモンや胆汁酸の原料にもなります。卵黄や動物性脂肪などの食物から入るのに加え、体の中でも大量に合成されています。通常、血中コレステロールが高くても自覚症状は出ませんが、全身に血液を運ぶ動脈の壁が狭くまた硬くなる動脈硬化をきたしやすくなります。また動脈硬化は命に関わる重大な病気である心筋梗塞や脳卒中の元になります。このためコレステロールが高い場合は、早期から食事療法(コレステロールを多く含む食物を控える)に取り組み、また低下が不十分な際は、薬内服を行います。
一方、他の病気から二次的にコレステロールが上昇することもあります。代表的なものは、甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群(腎臓の病気)などです。
HDLコレステロール(高比重リポ蛋白コレステロール):油であるコレステロールや中性脂肪は、ある種の蛋白質に結合することで、血液中に溶けて存在しています。この結合した物を一般にリポ蛋白と言い、比重(重さ)の違いから5種に分類しています。このうち一番比重が高いものをHDLと言い、この中に含まれているコレステロールをHDLコレステロールと呼びます。HDLは全身の末梢の血管にある余分なコレステロールを取り除き、代謝臓器である肝臓に運ぶ役割をしています。このため、このコレステロールはある程度高いほうが動脈硬化の防止になるので、“善玉” コレステロールとも呼ばれています。一方、動脈硬化を促進する本体はLDLコレステロールと言われ、別名、“悪玉” コレステロールと呼ばれます。

5.血中脂質検査A:中性脂肪

 中性脂肪は体の中で最も多い脂肪であり、貯蔵脂肪として皮下などに分布しています。食物中の脂肪以外に、体内では余った糖分からも合成されます。血液中のこの値は食事に伴って上下し、またカロリーの取り過ぎやアルコールによって上昇します。肥満や運動不足でも上がる傾向がありますので、高い場合には、それら生活習慣の改善が大切です。

6.血糖検査@

 血糖値は食事の影響を受けて上下するため、朝空腹時の値と食後の値では評価基準が異なります。基準値より高い場合は、糖尿病またはそれに近い状態(耐糖能異常または境界型と呼ばれています。)を疑います。糖尿病は遺伝的な要因も関与しますが、カロリー過多や運動不足による肥満の人に出現しやすく、境界型の人では、食生活改善や肥満の解消をしないと、将来、糖尿病に進む危険性があります。糖尿病では、腎臓や目の奥の網膜、神経などの細い血管が障害され、放置すると腎不全や失明に至ります。また太い血管の動脈硬化も進行しやすいことから、早期の発見と治療を要します。

7.血糖検査A:ヘモグロビン(Hb)A1c

 血糖検査におけるHbA1cの測定は、血色素(ヘモグロビン)蛋白の一つ:HbAに血糖が結合することを応用しているものです。即ち血糖値が高い程、結合量が多くなりHbA1cは高くなります。この量(%)は約1〜2ヶ月間の血糖値の平均を示しており、時々刻々変化する血糖値に比べ、長期的な経過を見る上で有用です。


 
     
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